目次
ISDNサービス終了(NTTのINSネット提供終了)への対応を進めたいものの、「現状が把握できず棚卸しが進まない」と悩んでいませんか。多拠点を運営している場合、請求情報や回線構成が分散し、着手地点が見えにくいケースも多くあります。
ISDN終了への対応では、単に回線を切り替えるのではなく、どの回線がどこで使われているかを正確に把握し、実際の利用実態まで踏まえて整理することがポイントとなります。ここでは、棚卸しの失敗しやすいポイントや、請求情報を起点とした全体像の把握、机上整理と現地確認の現実的な進め方を、実務担当者がすぐに活用できる形で解説します。なお、ISDNサービス終了への対応は「回線の移行(ひかり電話化)」と「その後の通信環境の見直し」を分けて整理することが重要で、ここで扱う棚卸しはその前提となる「現状把握の工程」にあたります。
*(ISDN終了について)
ここで言う『ISDN終了』は2028年12月末に予定されている音声サービスも含めたNTTの『INSネット』サービスの終了を指します。
INSネットの新規申込受付・提供終了について | NTT東日本
【NTT西日本】INSネットの新規申込受付・提供終了について

ここでいう「棚卸し」とは、単に請求情報を一覧化するだけでなく、どの回線がどこでどのように使われているかという利用実態まで含めて整理していく作業を指します。多くの担当者は最初の「情報収集」の段階でつまずきやすく、着手できずにいるケースが目立ちます。
特に多拠点で運用している企業の場合、各拠点の状況や用途まで一人の担当者が正確に把握するのは難しく、最初の一歩で足踏みしてしまう現場も多いのが実情です。以下、情報収集でつまずく代表的な3つの要因を整理します。
請求書には契約数・種別・番号などがまとまっており、棚卸しの最も信頼できる出発点です。ただし、キャリアごとに請求周期やフォーマットが異なり、紙とWeb明細が混在しているケースもあります。一覧化するだけで相当な手間がかかり、情報を揃える段階で作業が止まってしまうことも少なくありません。
拠点が複数ある企業では、ある拠点の請求書は現地で管理され、別の拠点は前任者から引き継がれた情報しか残っていない、といった状態が生まれがちです。現地スタッフに確認しても用途や構成が不明なケースもあり、情報を集める調整コストが大きなハードルとなります。
過去に担当者が入れ替わっていたり、構成が少しずつ追加されてきた場合、全契約や用途が正確に整理されていないことも珍しくありません。こうした属人的な状況が、棚卸しの初期段階で手が止まる一因となります。
【棚卸しが進まない主な要因】
|
要因 |
現場で起きていること |
結果 |
|---|---|---|
|
情報の分散 |
請求書・契約情報が拠点ごとにバラバラ |
全体像がつかめない |
|
担当範囲の分断 |
各担当者が一部しか把握していない |
誰も全体を説明できない |
|
請求の複雑さ |
キャリア・回線単位で明細が分かれる |
一覧化に時間がかかる |
|
現場との乖離 |
実際の利用状況が分からない |
判断ができない |

4つの壁の中で最も工数がかかるのが、壁3「請求の複雑さ」です。キャリアごとに異なる請求書を一枚ずつ処理する作業は、棚卸しの前段階から担当者を疲弊させます。
当社の通信費一括請求サービス「Gi通信」は、バラバラに届く通信費請求書を月1枚に集約し、インボイス制度・電子帳簿保存法にも対応しています。ISDN終了対応の棚卸しと並行して、通信費管理そのものをスリム化できます。
ISDNサービス終了を見据えて棚卸しを進める際、請求情報が揃った段階で通信回線の全体構成を明らかにすることが重要です。まずは請求書に記載された情報をもとに、通信会社ごとの契約回線、電話番号、種別(アナログ・ISDN・光回線など)、オプションやチャネル数などを一覧化して整理します。
この一覧化作業を通じて、回線の数や構成、拠点ごとの違い、重複契約の有無などが見えやすくなります。この段階で未使用回線や重複契約が発見される例も珍しくなく、そのままコスト削減や構成見直し、ひかり電話移行に向けた整理につながるケースも多く見られます。
棚卸しの初期段階で大切なのは、細かい技術的仕様の確認にこだわりすぎないことです。初めから完璧に整理しようとすると、情報収集や整理の作業が途中で行き詰まることがあります。まずは「どのような種類の回線が」「どれだけの数存在しているか」といった大枠を捉えることを優先し、細部の確認は現地確認と合わせて段階的に進めるのが現実的です。
棚卸しで全体像を把握した上で、次に必要になるのが「どのような構成で移行するか」という設計の整理です。従業員数や常駐人数、営業職の比率、店舗であれば最大稼働人数や電話機台数などをもとに、同時通話の目安を把握したうえで、以下の観点を確認します。
【回線構成設計の主な検討項目】
|
項目 |
検討内容 |
|---|---|
|
同時通話数 |
従業員数・業務量から必要チャネル数を算出 |
|
番号構成 |
代表番号・直通番号の整理 |
|
オプション |
転送・番号表示などの機能要件 |
|
利用用途 |
音声・FAX・警備・決済などの切り分け |
|
移行可否 |
ひかり電話への移行可否・代替手段 |
ISDN回線には音声通話に加え、FAXや警備設備、決済端末などの用途が紐づいているケースも多く、移行可否や代替手段の整理が必要です。移行手段はいくつかありますが、実務ではNTTのひかり電話が採用されるケースが多く、標準的な選択肢として検討されるのが一般的です。
棚卸しを進める際、回線単位で情報を集めても「どこで、どのように使われているか」が分からず判断に迷うケースが多く見られます。見落としや重複を防ぎ、実際の運用に即した見直しを行うには、拠点やフロアなどの「場所」を基準に情報を整理することが重要です。
たとえば「東京本社の3階にはどの回線が使われ、どんな業務で利用されているか」という粒度で情報を持つと、「この回線が停止した場合、どの業務に影響が出るか」といったリスクも具体的に把握できます。場所ごとに担当者や管理体制が異なる場合でも、利用場所と情報を紐付けておくことで、拠点担当者・現地スタッフ・保守業者との連携もスムーズになります。
【回線単位整理と場所単位整理の違い】
|
観点 |
回線単位 |
場所単位 |
|---|---|---|
|
把握できる内容 |
回線数・契約単位 |
利用場所・業務用途 |
|
課題 |
どこで使われているか分からない |
実態に即した整理が可能 |
|
判断のしやすさ |
低い |
高い |
|
現場との整合性 |
取りづらい |
取りやすい |
\ 請求情報の一元管理・回線構成の整理を検討したい方はこちら /
請求情報や契約書をもとに一覧化しても、現場を確認すると「すでに使われていない回線が請求上は残っている」「用途の認識が食い違っている」といった机上情報とのズレが明らかになることは珍しくありません。管理部門と現場担当者の認識にズレが生じているケースも多く、こうしたギャップを放置すると、次工程の見直しや判断が誤った前提で進んでしまうリスクが高まります。
そのため、机上の整理は棚卸しの出発点にすぎず、実態を正確に捉えるためには現地確認と組み合わせて進めることが不可欠です。
【机上整理と現地確認の違い】
|
観点 |
机上整理 |
現地確認 |
|---|---|---|
|
目的 |
契約・回線の全体像把握 |
実際の利用実態の確認 |
|
分かること |
回線数・契約内容・種別 |
利用用途・接続機器・稼働状況 |
|
強み |
効率よく全体を整理できる |
正確な実態が分かる |
|
限界 |
実態とのズレが残る |
全体像が見えにくい |
|
役割 |
判断の前提を作る |
判断の精度を上げる |
現地確認は、拠点ごとに設備の構成や導入経緯が大きく異なるため難航しがちです。過去の変更履歴が十分に残っておらず、現地スタッフでも全容を把握しきれていないケースも目立ちます。特に以下の2つの要因が絡むと、確認作業のボトルネックになります。
ビジネスフォンは、導入業者の記録が残っていない、保守契約が終了している、拠点ごとに異なる機種が導入されているなど、請求情報だけでは状況を把握できないケースが多く、現地で機器を一つひとつ確認する必要が生じます。
過去に継ぎ足しで増設された回線や、設定履歴が不明な機器がある場合は、「分かる範囲から把握を進める」ことが現実的です。無理に一度に整理しようとせず、確認できた箇所から記録を残し、要素ごとに精度を高めていく段階的な対応が停滞を防ぎます。
【現地確認が進まない主な理由】
|
要因 |
内容 |
|---|---|
|
拠点ごとの差異 |
設備構成や導入経緯がバラバラ |
|
情報不足 |
過去の構成や変更履歴が不明 |
|
関係者の分散 |
拠点担当者・保守業者との調整が必要 |
|
工数の大きさ |
拠点数が多く物理的負担が大きい |
実際に全ての現場を一度に確認するのは、複数拠点を持つ企業ほど現実的ではありません。まずは机上整理で全体構成を掴み、影響が大きい拠点や利用頻度の高い場所から現地確認を進める方法が有効です。完璧を目指すよりも、実務で対応できる範囲から着手し、徐々に全体像を明らかにする進め方が停滞を防ぎます。
現地確認は単なる実態把握にとどまらず、業務全体の見直しやコスト削減の出発点になります。当社の棚卸しでも、現地確認を契機に回線数の削減や構成統合につながるケースが多く見られます。
【現地確認で見えてくる改善ポイント】
|
発見される課題 |
期待できる効果 |
|---|---|
|
使われていない未使用回線 |
解約による固定費削減 |
|
同一用途での重複契約 |
契約統合による運用負荷軽減 |
|
利用状況に合わないオプション |
不要オプション解約でコスト最適化 |
|
当初用途から外れている回線 |
構成再設計による管理体制の簡素化 |

通信回線の棚卸しは、ISDNサービス終了に伴う移行対応を進める上での前提作業であり、請求情報を一覧化する「机上整理」だけで完結するものではありません。現場の実態と照らし合わせて初めて全体像が明確になり、次の判断へ進める状態が整います。
【棚卸しの2段階アプローチ】
|
ステップ |
やること |
得られる成果 |
|---|---|---|
|
①机上整理 |
請求情報から回線種別・番号・オプションを一覧化 |
全体構成と重複・未使用の仮説 |
|
②現地確認 |
影響の大きい拠点から順に利用実態を突き合わせ |
実態に即した見直し判断材料 |
|
③再構成・移行 |
回線契約の再構成とひかり電話への切替 |
通信環境の最適化・コスト削減 |
「何から手を付ければよいか分からない」と感じている場合は、まずは机上整理から着手し、段階的に現地確認へ進めていくのが最も現実的です。整理の進め方や情報の集約に課題を感じている場合は、お気軽にご相談ください。現状把握から見直しの優先順位付け、実際の構成変更まで、実務に即した支援をご提案いたします。
NTT東日本・NTT西日本のINSネット(音声サービスを含む)は、2028年12月末をもって提供終了予定です。新規申込受付は2024年1月にすでに終了しており、既存契約のひかり電話などへの移行対応が全国で進んでいます。
まずは請求情報を集めて回線種別・番号・オプションを一覧化する「机上整理」から着手するのが現実的です。ただし請求情報だけでは現場の利用実態と一致しないため、その後に拠点・フロア単位での現地確認を段階的に組み合わせる進め方が有効です。
拠点ごとに請求書のフォーマットや管理者が異なり、情報が社内に分散していることが最大の障壁です。加えて、ビジネスフォンの保守記録が残っていない、FAXや警備・決済端末が回線に紐づいているなど、机上では見えない要因が現地確認を難航させます。
業務影響の判断や優先順位付けを行うには「場所単位(拠点・フロア)」での整理が有効です。回線単位では契約数は把握できても、「停止時にどの業務に影響が出るか」を判断できないためです。当社では場所単位での整理を起点に全体構成を再設計するアプローチを推奨しています。
複数キャリアにまたがる請求情報の一元化、拠点間の情報集約、ひかり電話への移行設計までを一気通貫で進められる点がメリットです。当社では、複数拠点環境における請求情報の一元管理を起点に、回線構成の再検討からひかり電話への移行対応までを現場と連動して支援しています。
あわせて読みたい記事
ISDN終了対応から始める通信環境見直し|棚卸し・優先順位・通信BCPまで解説
ISDN終了対応は何から始める?最初に必要な現状把握と棚卸し
監修者|在籍するひかり電話切替アドバイザー
野中 啓祐(のなか けいすけ)
株式会社インボイス ICT営業部
■経歴
2004年に株式会社インボイス入社。約10年間にわたり新規顧客開拓・既存顧客フォローを経験し、2015年より光コラボレーションの営業マネージャーとして大手企業から中小企業まで幅広く担当。
「実現可能なプランニング」をモットーに、これまで300件以上のひかり電話切替支援を実現している。