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ISDNサービス終了(INSネットの提供終了)への対応をきっかけに、通信構成全体を見直したいと考える企業は少なくありません。
(※本記事のISDN終了は、2028年12月に予定されるINSネットサービスの終了を指します。)
ここでは、ISDN対応を単なる移行作業ではなく「通信環境見直しの起点」と捉え、棚卸し→判断→設計→実装という流れで、実務で役立つ進め方をまとめます。すべてを同時に進める必要はなく、見えてきた課題を優先順位に沿って段階的に対応していくのが現実的です。
回線の切替を単なる「作業」として終わらせるのか、それとも通信環境を最適化する「機会」として活かすのかの分かれ道は、最初の一歩をどう設計するかにかかっています。
■参考
INSネットの新規申込受付・提供終了について|NTT東日本
【NTT西日本】INSネットの新規申込受付・提供終了について|ニュースリリース
総務省|電気通信政策の推進|固定電話網の円滑な移行

通信環境の見直しは、大きく「棚卸し→判断→設計→実装」という4つのフェーズに分けて考えると、全体像がつかみやすくなります。それぞれのフェーズで何を行い、どのようなアウトプットを得るのかを、まずは下表と図で整理しておきましょう。
| フェーズ | やること | 主なアウトプット |
|---|---|---|
| ①棚卸し | 回線・契約・用途を洗い出す | 拠点×回線の一覧 |
| ②判断 | 停止時の業務影響で優先度を決める | 優先順位表 |
| ③設計 | レベルと配分で対策を段階設計 | 対策レベル表 |
| ④実装 | 冗長化・影響範囲を組み合わせる | 移行・構成計画 |
ISDN終了は、単なる期限付きの作業として片づけるのか、それとも通信環境を整え直す機会とするのかで、その後の効率やコストが大きく変わります。ここでは、なぜこの対応を「見直しのきっかけ」と捉えるべきなのか、そして着手時に押さえておきたい時期の注意点を解説します。
2028年12月のISDNサービス終了は、単なる回線の切替作業にとどまらず、通信環境全体を見直す入口になります。長年の運用で構成が複雑化した企業ほど、このタイミングで「本当に必要な構成か」「業務に合っているか」といった本質的な課題が表面化します。特に複数拠点を展開する企業では、拠点ごとに導入時期や担当者が異なり、いつの間にか構成がばらばらになっているケースが目立ちます。
まず現状の棚卸しを進めれば、これまで見過ごされてきた不要な回線・拠点ごとの構成差・業務に合わない使い方が明確になります。移行だけを目的とせず全体を見直すことが、長期的な効率化と安定運用、そして無駄なコスト・運用負荷の削減につながります。
そして対応は一度に進めるのではなく、優先順位を整理しながら段階的に行うことが見えてきます。ISDN終了という「締め切り」があるからこそ、後回しにしがちな通信環境の見直しに着手する好機だと捉えることが大切です。
特に注意したいのは、移行対応が特定の時期に集中すると、希望する工事日に作業ができないおそれがある点です。サービス終了の直前期には申し込みが殺到することが見込まれており、余裕をもったスケジュールで進めることが、業務への影響を避けるうえで欠かせません。
「まだ数年ある」と考えて先送りするのではなく、早めに棚卸しへ着手しておくことが、結果的に選択肢を広げることにつながります。
通信環境の見直しは、必ず「棚卸し」から始まります。とはいえ、棚卸しとは具体的に何を、どこまで整理する作業なのでしょうか。ここでは、その考え方から現状把握が最優先となる理由、請求書を起点にした実践的な進め方までを順に見ていきます。
見直しで最も重要なのが棚卸しです。どの回線がどの業務に使われているかが分からなければ、その後の判断も対策も進みません。拠点ごとの回線や用途を一覧化して初めて全体像が見え、この過程で行う回線構成の再設計がISDN終了対応の中核となります。
棚卸しは単なる「回線の数え上げ」ではなく、契約・用途・業務との結びつきまで含めて整理する作業だと考えてください。
移行先は複数ありますが、実務上は採用実績や運用面からひかり電話が標準的な選択肢となるケースが多いため、本記事もそれを前提とします。拠点ごとの利用状況を踏まえて必要なチャネル数・番号構成・オプションを整理し、警備設備や決済端末など回線に紐づく用途も確認したうえで、現状に合った構成へ再構成します。
特にFAXや警備、決済端末はISDN回線に紐づいていることが多く、見落とすと移行後にトラブルが発生しやすいため注意が必要です。
現場でも、棚卸しで現状と実際の利用状況を突き合わせる段階で「何が問題か」「どこから着手すべきか」が具体的に浮かび上がります。判断・設計・実装のすべては、この棚卸しから始まります。
現状が見えなければ優先度も判断できず、不要回線の削減や障害リスク低減にも着手できないため、現状把握が最優先です。棚卸しに時間をかけることは遠回りに見えて、実は最も確実な近道になります。
棚卸しの具体的な手順としては、まず毎月の請求書を全て集め、回線番号・回線種別・設置場所・月額費用を一覧に落とし込むところから始めると効率的です。請求書には契約中の回線がもれなく記載されているため、「契約しているが実際には使われていない回線」を洗い出す手がかりになります。
次に、その一覧と現場のヒアリングを突き合わせ、各回線がどの業務・どの機器につながっているかを埋めていきます。ここまで整理できれば、拠点ごとに構成が食い違っている箇所や、用途不明のまま費用だけ発生している回線が浮かび上がってきます。
なお、経理・総務が中心となって進める場合は、通信費の勘定科目や支払データもあわせて確認しておくと、後のコスト見直しがスムーズです。
特に通信費は毎月固定的に発生するため、使っていない回線を1本解約するだけでも、年間では相応の削減につながります。棚卸しは「守り」の作業に見えて、実はコスト削減という「攻め」の成果にも直結するのです。
棚卸しで現状が見えたら、次はどこから手を付けるかという「判断」の段階に進みます。ここで軸になるのが、業務が止まったときの影響の大きさです。
判断の基本的な考え方と、より実態に即した二軸での整理方法を紹介します。
棚卸しの後は優先順位付けが不可欠です。移行期限のあるISDN終了対応を軸にしつつ、回線や設備の数ではなく「その業務が止まったときの影響の大きさ」で判断することが重要です。
売上や顧客対応に直結する業務ほど早く手厚く、内部処理や一時的な遅延で済む業務は優先度を下げて段階的に行う。この価値基準が全体設計の出発点になります。
担当者ごとの主観で決めるのではなく、業務影響を共通のものさしにして一覧化すれば、リソースを無駄なく配分でき、社内説明や経営層への説得材料としても有効です。「優先度が主観的になりがち」という不安も、具体的な業務影響で整理すれば現場の合意を得やすくなります。
下表のように「停止時の影響」と「影響度」を並べて可視化すると、どこから手を付けるべきかが一目で伝わります。

判断の軸をもう一段深めるなら、「業務影響度」だけでなく「復旧の緊急度」を掛け合わせて考えると、より実態に即した優先順位が見えてきます。たとえば受注処理やコールセンター、店舗の決済端末、警備回線は、止まれば即座に売上や保安に影響するため、影響度・緊急度ともに高い最優先領域に位置づけられます。
一方、社内会議やバックオフィスの定型処理は、一時的に止まっても代替手段で乗り切れることが多く、優先度を下げて段階的に対応できます。この二軸で整理すると、限られたリソースをどこに集中すべきかがより明確になります。
【例:業務影響に基づく優先順位整理】
| 業務内容 | 停止時の影響 | 影響度 | 対応優先度 |
|---|---|---|---|
| 受注処理 | 売上停止・顧客影響大 | 高 | 最優先 |
| コールセンター | 顧客対応停止 | 高 | 最優先 |
| バックオフィス | 業務継続可能(手作業) | 中 | 中 |
| 社内会議 | 一時的な業務遅延 | 低 | 低 |
優先順位が定まったら、それを実際の対策へと落とし込む「設計」の段階です。ポイントは、すべてを一律に強化しようとしないこと。業務価値に応じて対策レベルを分け、配分にメリハリをつける考え方を見ていきましょう。
すべての回線を一律に強化しようとすると、コストが膨らみ、かえって実行が止まりがちです。「全体を一律強化した結果、費用対効果が合わず頓挫した」という声も少なくありません。限られた予算と人員のなかで成果を出すには、メリハリのある配分が欠かせません。
大切なのは、業務ごとに必要な対策レベルを見極め、重要度に応じて配分しながら段階的に進める設計です。「止まっても継続できる最低限」「止まりにくい構成」「ほぼ止まらない高度な対策」など複数の選択肢を整理し、優先順位に沿って進めます。
まずは業務影響の大きい拠点・回線から着手し順次広げれば、予算や状況変化にも柔軟に対応でき、過剰投資や現場の混乱を避けながら一歩ずつ前進できます。
段階設計に不安がある場合も、「全体を把握したうえで判断できる状態」を作ることが解決の第一歩です。
下表は、対策レベルを三段階に分けて整理した一例です。すべての業務を「高」で揃える必要はなく、影響度の低い業務は「低」でも十分なケースが多くあります。
重要なのは、レベルの高低そのものではなく、業務価値とレベルが釣り合っているかという視点です。この対応関係が明確になっていれば、投資判断の根拠も社内で共有しやすくなります。
【例:対策レベルの考え方】
| レベル | 対策内容 | 対象業務例 |
|---|---|---|
| 低 | 単一回線 | 社内業務・会議 |
| 中 | 回線増強・簡易冗長化 | 一部顧客対応業務 |
| 高 | 完全冗長化・経路分散 | 受注・コールセンター |
設計した対策を形にする「実装」の段階では、通信の構造をどう理解し、複数の対策をどう組み合わせるかが問われます。障害時の止まり方を見極める視点と、コストを抑えながら安定性を高める組み合わせ方を解説します。
実装段階では、「構造」をどう理解し、複数の対策をどう組み合わせるかが要点です。現場では複数業務が一つの回線に集約され、障害の影響が広がりやすい構成が少なくありません。単独の対策では不十分なため、冗長化と影響範囲の限定をバランスよく組み合わせる必要があります。
たとえば、業務ごとに回線を分散する、重要業務のみ二重化するなど、現実的な対策を選びます。重要なのは「対策を入れたか」ではなく、「停止時にどの業務がどの範囲で止まる設計か」を理解しておくことです。同じ障害でも構成次第で停止範囲は大きく異なります。
設計図や一覧表で止まり方を可視化すれば、リスクの集中箇所や業務継続可能な範囲が見え、過不足のない対策設計につながります。下図のように、集約された構成と分散・二重化した構成を比べると、その差は一目瞭然です。
たとえば、受注・電話・決済・警備がすべて1本の回線に集約されている場合、その回線に障害が起きれば全業務が同時に止まってしまいます。
これに対し、主回線と予備回線を用意して業務を振り分け、特に売上や保安に直結する業務だけを二重化しておけば、一部で障害が起きても影響を最小限にとどめられます。
すべてを一律に二重化する必要はなく、あくまで「業務価値に応じてメリハリをつける」ことがコストと安定性を両立させる鍵です。この考え方は、前段で整理した優先順位表とそのまま連動します。

ここまでの4つのフェーズを支える土台となるのが、「全体を把握し、判断を回し続けられる状態」です。通信環境の最適化は一度で終わるものではありません。
判断を継続する意味と、それを可能にする情報整理の重要性、さらに得られる副次的な効果を整理します。
見直しは「棚卸し→判断→設計→実装」で進めますが、実際には判断部分で「どこから・どの拠点や業務を・どの順で」が整理できず停滞しがちです。
通信環境の最適化は一度で終わらず、構成や利用状況の変化に合わせて判断を回し続けることが必要です。
事業の拡大や拠点の統廃合があれば、その都度、最適な構成は変わっていきます。
その判断を支えるのが、契約・請求・構成・障害履歴がバラバラでなく横断的に見渡せる状態です。情報自体は存在していても、拠点別・サービス別に散在し、業務影響やコスト・障害傾向を組み合わせて整理できていないことが、判断を妨げる最大の要因になります。
「今どの回線がどこでどう使われ、どこにいくらかかっているか」が見えなければ、優先順位付けも設計も止まってしまいます。だからこそ、必要な情報を一元的に、複数の観点で横断的に見渡せる状態を保つことが、通信環境見直しのすべての前提となります。
全体を整理する過程では、業務継続性の強化に加えて副次的なメリットも得られます。棚卸しで不要な回線・利用実態のない契約が明確になり通信コスト削減につながるほか、契約・請求情報の整理で運用管理の負担も軽減します。
構成の最適化により障害時の影響も抑えやすくなり、安定運用と現場負担の減少に直結します。こうした効果は、通信環境を全体として整理する過程で自然に得られるものです。
通信環境の見直しは、ISDN終了を起点に始めることで、一度で完結せず棚卸しと判断を重ねて段階的に改善していくものになります。「棚卸し→判断→設計→実装」という流れが、現場の迷いや停滞を解消し、確実に前進させる鍵です。
「どこから手を付けるか分からない」「情報が分散して判断できない」「全体像が見えない」こうした悩みも、構成・契約・業務と回線の関係を整理し「判断できる状態」に変えれば解消できます。まずはISDN終了への対応を進めつつ、その中で見えた課題を優先順位に沿って段階的に見直すのが現実的です。
当社は、通信費データの整理や回線構成の見直しを支援し、企業が通信環境を横断的に把握し、必要な対策を設計・実装できる状態づくりをサポートします。点在する情報を一元化し判断しやすい土台を用意することで、ISDN終了後も安定運用と最適なコスト管理を実現します。情報の分散や判断軸の不明確さでお困りの場合は、現状整理や情報の見える化からお手伝いします。
ISDN終了は、多くの企業にとって避けて通れない課題である一方、通信環境をあるべき姿へと整え直す絶好の機会でもあります。棚卸しで現状を見える化し、業務価値を基準に優先順位を定め、レベルと配分を踏まえて段階的に設計・実装。この一連の流れを一度作っておけば、今後の環境変化にも柔軟に対応できる土台が整います。まずは自社の請求書を手元に集めるところから、第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
NTT東日本・西日本のINSネット(INSネット64/64・ライト/1500)は、2028年12月31日をもって提供を終了します。新規申込受付はすでに2024年8月31日で終了しており、データ通信用の「ディジタル通信モード」は2024年1月から地域ごとに段階的に終了しています。
最初に行うべきは「棚卸し」です。毎月の請求書を起点にすると、どの拠点でどの回線(アナログ/ISDN/光)が使われているかを網羅的に把握できます。回線の数を数えるだけでなく、各回線がどの業務に紐づいているかまで整理することが、その後の判断・設計の前提になります。
必要ありません。まずは業務を止めないための音声回線の移行(多くはひかり電話化)を優先し、棚卸しで見えた課題は業務影響の大きい順に段階的に対応するのが現実的です。すべてを一律に強化するとコストが膨らみ、かえって頓挫しやすくなります。
「その業務が止まったときにどれだけの影響が出るか」を基準に決めます。受注処理やコールセンターなど売上・顧客対応に直結する業務は最優先で冗長化などの手厚い対策を、社内会議など一時的な遅延で済む業務は優先度を下げます。回線の数や種類ではなく、業務影響で並べ替えることが要点です。
拠点・フロアなど「場所」を単位に、請求情報を一元化して整理するのが有効です。当社では通信費データを起点に、分散した契約・回線・業務の関係を横断的に見える化し、業務影響に基づく優先順位付けまで支援しています。情報が散在して判断できない、という状態の解消からお手伝いします。
監修者|在籍するひかり電話切替アドバイザー
野中 啓祐(のなか けいすけ)
株式会社インボイス ICT営業部
■経歴
2004年に株式会社インボイス入社。約10年間にわたり新規顧客開拓・既存顧客フォローを経験し、2015年より光コラボレーションの営業マネージャーとして大手企業から中小企業まで幅広く担当。
「実現可能なプランニング」をモットーに、これまで300件以上のひかり電話切替支援を実現している。
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