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現在では、光回線を利用したインターネット通信がごく一般的に行われていますが、光回線はインターネット通信だけでなく電話サービスにも利用されています。光回線を利用した電話サービスは、一般的に「ひかり電話」と呼ばれていますが、ひかり電話にはこれまでのアナログ電話にはないさまざまなメリットがあるのが特徴です。
本記事では、ひかり電話の概要やアナログ電話との違い、メリット・デメリット、利用するための手順など、ひかり電話化の際に押さえておきたい基本情報を紹介します。
ひかり電話とはIP電話サービスの一種で、インターネット接続に使われる光ファイバーを用いて通話を行います。
一般的なIP電話の場合、音声データをパケットというデータの単位に分けて通信します。ひかり電話の場合、専用のインターネット回線である光ファイバーを利用して通信を行います。両者を比較すると、専用の回線を利用するひかり電話の方が音声の品質が良好とされています。
ひかり電話の表記を見ていると、「ひかり」というようにひらがな表記されている「ひかり電話」もあれば、「光」というように漢字表記されている「光電話」もあることが分かるでしょう。両者はサービスとしては同じもので、違いは「どこがサービスを提供しているか」ということのみです。「ひかり電話」と表記されるものはNTT東/西日本が提供しているサービスで、「光電話」と表記されるものはそれ以外の事業者が提供しているサービスです。
本記事では混乱を防ぐため、すべて「ひかり電話」と表記して説明を行います。
ひかり電話とアナログ電話の大きな違いは、電話回線そのものです。電話線を用いるアナログ電話に対し、ひかり電話では光ファイバーを用います。光ファイバーによって高品質な情報のやり取りを行えるため、ひかり電話はアナログ電話よりも音声が鮮明で聴き取りやすいです。
現在電話は、電話線を用いたアナログ電話と光ファイバーを用いたひかり回線の両方が利用されていますが、将来的に回線はすべてひかり化されることが決まっています。
NTT東日本・西日本が発表した情報では、2024年1月にアナログ回線から「IP網」と呼ばれる「ネットワークを利用した信号交換機の設備」に移行するとあります。そのため、「移行により提供が難しくなるサービス」や「利用者の減少が見込まれるサービスの提供」は、切り替えと同時に終了することになっています。
今後新たに電話の利用を開始する場合は、ひかり電話を選んだほうがよいでしょう。
ひかり電話を利用するメリットとしては、主に以下のようなことが挙げられます。
それぞれのメリットについて、説明します。
ひかり電話はアナログ電話よりも月額料金を安く抑えられるのが、大きなメリットのひとつです。アナログ電話の場合、多くは月額料金が数千円程度なのに対し、ひかり電話は1カ月あたりの基本使用料金が税込550円のプランもあります。
これは通話時間に関わらず必ずかかる費用なので、アナログ電話の代わりにひかり電話を利用すれば、経費の大幅な削減が可能です。
ひかり電話では月額料金だけでなく通話料金も、アナログ電話より低く設定されています。アナログ電話の場合、携帯電話への通話料金は1分あたり17.6円、国内の固定電話へは3分あたり8〜80円と、距離に応じて変動します。一方、ひかり電話の場合、携帯電話への通話料金は、1分あたり16〜18円とアナログ電話との差はありませんが、国内の固定電話にかけるのであれば、距離に関係なく一律で3分あたり8円とアナログ電話よりも安いです。
日本全域に支社があり、支社間などで電話する機会が多い企業の場合、アナログ電話を利用するかひかり電話を利用するかによって、通話料金が大幅に変わることになるでしょう。また、国際電話に関してもひかり電話のほうがアナログ電話よりも通話料金が低く抑えられているので、規模や取引網が大きな企業ほど、ひかり電話の利用による恩恵を受けやすいです。
先述のとおり、ひかり電話では光ファイバーを利用して音声データのやり取りを行います。ノイズの影響を受けにくいという光ファイバーの特性のおかげで、音声データをクリアな状態でやり取りできるので、良い音質で電話をすることが可能です。
また、ノイズの影響を受けにくいということは、電話の途中で音声が途切れてしまうような可能性が低いということでもあります。大事な電話の最中に音声が聞こえにくくなるような心配も少ないので、安心して利用できるでしょう。
ひかり電話には多くのメリットがあるということで、アナログ電話からひかり電話への乗り換えを検討する場合に懸念材料となるのは、「電話番号が変わらないか」ということです。もし電話番号が変更になるのであれば、取引先などに電話番号が変わった旨を伝えなければなりませんし、ホームページ等に掲載している情報もすべて更新しなければなりません。
実際はひかり電話に乗り換えたとしても電話番号は変わらず、利用中の番号をそのまま使用することもできます。そのため、安心して乗り換えを検討できるでしょう。
なお、電話番号を発行した当時のサービスによっては番号を引き継げない可能性があります。申し込み前に引き継ぎ可能かを確認しておきましょう。
ひかり電話を利用するデメリットとしては、主に以下のようなことが挙げられます。
それぞれのデメリットを解説します。
ひかり電話は、あくまでも光回線のオプションとして提供されるサービスです。したがって、光回線を未契約の場合は、ひかり電話を利用するためには新規で光回線のインターネット契約が必須です。この場合、ひかり電話の基本料金以外に、別途インターネットの月額利用料金を支払う必要があります。
現時点で光回線を契約していない場合は、光回線導入の手間と費用が余分にかかることは、念頭に置いておかなければなりません。
ひかり電話では、以下に挙げるような一部の電話番号には電話をかけることができません。
いずれも普段から頻繁に利用する番号というわけではないので、デメリットとして感じないケースもあるでしょう。しかし、業務上、上記の電話番号を利用している企業などは要注意です。
ひかり電話は常にルーターにつないだ状態でしか使うことのできない電話サービスなので、停電などによって電力が止まると、電話が使えなくなってしまいます。そのため、災害発生時には利用できない可能性があります。
また、停電から復旧した後も、再度設定を行わなければ利用できない可能性があります。業務上、電話による通話を必須とする企業などは、災害時の復旧手順などを社内で周知しておいたほうがよいでしょう。
ひかり電話は光ファイバーを利用して通話を行うサービスなので、インターネット障害が発生しているときは通話が安定しなかったり、そもそも利用できなくなったりする場合があります。
インターネット障害が発生しているということは、インターネットでの情報収集を行うことはできません。電話は貴重な連絡・通信の手段になるはずですが、ひかり電話の場合はインターネットと共に使えなくなってしまうのです。停電が起きた場合と同様に、非常時の際に不安が残るということは念頭に置いておいたほうがよいでしょう。
ひかり電話を利用するための手順は、すでに光回線を利用しているかどうかで変わってきます。すでに光回線を利用している場合とまだ利用していない場合、それぞれでのひかり電話を利用するための手順について、以下で説明します。
すでに光回線を利用している場合、光回線のサービス提供事業者に連絡をしてひかり電話の申し込み手続きを行いましょう。ひかり電話を導入するためには、簡単な工事が必要で、工事費もかかります。基本工事費に加えて交換機工事費や機器工事費なども発生するため、事前に見積りを依頼しておくとよいでしょう。
まだ光回線を利用していない場合は、まずは光回線の契約から行わなければなりません。光回線契約を行う際に、オプションとして「ひかり電話」を選択して同時に申し込むことで、手続きをスムーズに進められます。光回線の導入には回線工事を行う必要があり、回線工事およびルーターの用意が整えば、すぐにひかり電話を利用することができます。
【まとめ】
ひかり電話は、インターネット接続に使われる光ファイバーを用いた電話サービスです。ひかり電話を利用する際は、利用中の光回線の提供事業者に手続きを申し込み、工事を行います。光回線を利用してない場合、まずは光回線サービスを契約しなければなりません。
ひかり電話は、アナログ電話よりも月額料金や通話料金を抑えられたり、音質が良かったりといったメリットがあります。日本中や世界中に電話をする機会の多い企業であれば、ひかり電話の導入によって幅広く恩恵を受けることができるでしょう。
ただし、ひかり電話は停電中やインターネット障害のときは利用できないといったデメリットもあります。電話業務が必須の企業などは、万が一のときの復旧手段の周知に加え、別の通信手段を確保しておくこともおすすめします。