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約1年前の2017年10月にNTT東日本より発表された報道を皆さんは覚えていますか?内容としては現在の固定電話のPSTN(Public Switched Telephone Network=公衆交換電話網)をIP網へ移行するというものでした。それに併せてISDN回線サービス「INSネット」のディジタル通信モードの終了も発表されました。
発表以降、関連する業界ではこれらのことを「2024年問題」と呼んでいます。
もしかすると本件に絡んだ案内が皆さんにもあったかもしれません。
そもそも本当に自社が「2024年問題」の対象なのか分からない方も多くいるのではないでしょうか。もし下記の項目に該当するようでしたら、本コンテンツは一読の価値があります。
まず「2024年問題」に触れる前に、なぜ電話網が切り替えられることになったのか。
理由は二つあります。それは「通信市場の変化」と「交換機の寿命」です。
通信市場は技術の進歩によりめまぐるしく変化しています。20年前までは主流だった固定電話は契約数を年々減らしています。実際に2006年頃は約5,500万件の契約数があったにもかかわらず、2015年には半数近くの約2,300万件まで減少しています。さらに今後IP電話や携帯電話がより普及し固定電話の契約数は減少すると予測されており、現状の電話網の維持は困難と言われています。
また現存の交換機(中継交換機・信号交換機)は既に製造を中止しており、耐年数がもって10年前後とも言われています。
こういった背景もあり、NTTは切り替えを進めているようです。
出典:総務省ホームページ
(http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc262210.html)
では「2024年問題」とは何でしょうか。
電話網の移行自体が問題なのではありません。移行に伴い廃止されるサービス「INSネット」ディジタル通信モードの終了が問題とされています。
ご存知の方も多いかと思いますが、企業間で取引の際に使われるEDI(Electronic Data Interchange)システムの多くが、「INSネット」のディジタル通信モードを利用しています。つまりサービスの終了に伴い、商品の受発注や発送処理、銀行の振り込み、会計時のクレジットカード決済、店舗のレジ端末の売り上げ情報などに不具合が出てくる可能性があるといわれています。
NTTはこの問題を解消するために、代替案と補完策を提示しています。
代替案としては、後継サービスであるフレッツ光を利用したデータコネクトを利用するものです。補完策としては、「メタルIP電話上のデータ通信」を提供するというものです。
実証実験では代替案、補完策でデータ通信を行うことは可能とされています。しかく「メタルIP電話上のデータ通信」は伝送速度の遅延など実運用に耐えられるか不安視もされています。
<参考リンク>
東日本電信電話株式会社
「INSネット ディジタル通信モードの提供終了に伴う当面の対応策(補完策)「メタルIP電話上のデータ通信」に係る検証結果について」
http://www.ntt-west.co.jp/denwa/testbed/result.html
「掲載検証結果一覧 EDIシステム 04-17-0006」
http://www.ntt-west.co.jp/denwa/testbed/pdf/result/04-17-0006.pdf
ここまでの内容を既に知っており、対策予定、対策済みであれば問題ないなさそうです。もし初めて知った方、どうすればいいのか分からない方はまず「INSネット」ディジタル通信モードを利用しているか確認することから始めてみましょう。
確認方法は2つあります。
【方法①】
まずは自社で利用している機器(ディジタルサービスユニットやターミナルアダプタ)を調べてみましょう。不明であれば、機器メーカーや保守ベンダへ確認してみましょう。システム関係の部署の方にも確認してみるといいでしょう。
【方法②】
請求書を確認してみましょう。こちらは経理や総務の方であれば分かるかと思います。
NTTや弊社からの請求書の内訳に「INS通信料」の料金が発生していればINSディジタルモードを利用している可能性があります。またバックアップ回線など低頻度で利用している場合もあるので、複数月調べてみましょう。
有効な対応策としては2つあります。
一つは上記でも記載したNTTが代替案として推奨しているデータコネクト(ひかり電話)を利用したEDIです。メタル回線の後継サービスを利用してEDIシステムを構築するものですが、従来の固定電話と通信の方式が異なる為、対応機器が必要になります。
固定回線をひかり電話化するのとあわせて、周辺機器をひかり電話対応の機器に変更するのが一般的です。
もう一つはインターネットEDIです。電話網とは切り離してEDIシステムを構築する方法です。グローバル化の流れもあり業界によっては推奨しているケースも多いため、今後はインターネットEDIが主流になると予測されています。
あまり推奨されていませんが、その他にも対応策があります。
・メタルIPを利用したEDI
NTTが補完策として提示している移行策です。
NTTは後継サービス(ひかり電話データコネクト)への移行が間にあわない利用者に、メタルIPの提供を予定しています。ただしこのメタルIPを利用したEDIの実証実験では、最大4倍の遅延が確認されているため注意が必要といわれています。
以上のように様々な方法があるようです。
但しEDIに関しては自社だけでなく取引企業も関係してきます。また所属する業界団体毎に推奨されているシステムを導入する必要もあるため、関連団体などの動向を確認する必要があります。
ここまでご覧頂いた皆さんは、まだ対策前かもしれません。
業者や団体は早めの移行を推奨しています。もちろん今から用意できるに越した事はありませんが、まだあわてるような時間でもありません。
移行の期間の目安は2020年から23年と言われています。
まずは自社の状況をしっかり把握し、業界の移行に合わせた運用を出来るように準備をしていきましょう。その上で2020年以降にスムーズに切り替えが進められるよう、スケジュールを管理しておくことをオススメします。
また本件についての新たな情報がありましたら、皆様にお届け致します。