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「電報」と聞いてみなさんは何を思い浮かべますか?
ためしに周囲の社員に声をかけてみたところ、結婚式などの冠婚葬祭にくわえ、笑っていいともの祝電やとなりのトトロのワンシーンなど懐かしのキーワードが聞こえてきました。
携帯電話やメール、SNSが普及した現在、電報を利用する機会は昔と比べて格段に減っているのかもしれません。生まれてこの方、電報を送ったことも受け取ったこともないという人は多いでしょうし、ましてや115番が電報の申込番号だなんて知っている人も少なくなっているのではないでしょうか。
しかし結婚式などに贈る祝電や、不幸があった際の弔電は現在でも広く使われています。とりわけ儀礼的な連絡手段として、ビジネスにおいては現在でも欠かせないものとなっています。ちなみに電報料金が通信の請求書に合算されているケースも多く、一括請求サービスを提供している当社としても他人事ではありません。
そこで今回は当社目線で電報にまつわるエトセトラをご紹介していきたいと思います。総務や経理のみなさんの業務にお役立ていただく事はもとより、いざというときの豆知識としてもご一読下さい。
《目次》
ご存知の方も多いでしょうが、念のため辞書を引いてみました。
「発信者の原文を電信で送り、先方で再現して受信者に配達する通信」 出典: デジタル大辞泉(小学館)
「電信施設を使用して送受する通信。また、その通信文」 出典: 三省堂/大辞林 第三版
「電報(でんぽう)とは、電信を用いた文書(「電文」という情報)の配達サービスである。郵便による信書より高速に通報できる」 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/09/21 15:00 UTC 版)
ここでひとつ気になったワードが"電信"です。
電信とは、電気通信における信号伝送方式の一つですが、これは国内初の電報サービスが開始された1869年(明治2年)当時の状況の名残のようです。現在に比べて通信網も通信技術も未熟であった当時は、「トン・ツー」の電気信号を組み合わせて交信を行うモールス信号を電報局の担当者が解読、それを文章に起こして宛先へ配達する方法が採用されていたそうです。電報はメッセージを印刷した"台紙を届けるモノ"とのイメージを持っていましたが、それこそ電気通信サービスの先駆けであると言えるのかも知れませんね。
ちなみに、いわゆるNTT電報が文字数に応じて料金が上がるのも、この当時の仕組みが影響しているようです。現在でもNTTの定文電報(旧 緊急定文電報)では、短くても確実にメッセージが伝えられるような定型文が用意されています。またすでに慣用句にもなっている「サクラサク」や「サクラチル」。これは昭和30年代から平成初期にかけて受験の合否を知らせる際、できるだけ少ない文字数で済むように工夫して打電したのが事の始まりとなるそうです。
なお日本で最も電報が利用されていた時期は1963年(昭和38年)頃で、年間9,461万通もの電報が送られていたようです。当時そのうちの8割程度は慶弔以外の一般的な連絡用途でしたが、1973年(昭和48年)には比率が逆転し、現在のように慶弔利用がメインになっていきます。
その後、電話やファックス、メールやSNSの普及に伴い、電報利用数の減少は続いていますが、それでも2016年(平成28年)時点で、電報類似サービスを含めれば年間1,200万通ほどの電報が利用されているようです。
《参考リンク》
総務省 信書便年報 平成29年度版
http://www.soumu.go.jp/main_content/000545530.pdf
総務省 特定信書便事業の現況(平成29年度)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000574203.pdf
結婚式や葬儀など冠婚葬祭はもとより、入学や卒業、開業や開店、就任や昇進、叙勲や褒章、選挙の激励や当選祝いなど様々なシーンで利用されています。
とりわけビジネスにおいて取引先に祝意や弔意をしっかり伝えたい場合、メールでは失礼と受取られる可能性がありますし、電話ではかえって先方の迷惑になるかも知れません。
その点において電報であればビジネスマナーにものっとっていますし、伝えるタイミングもはかりやすい上にメッセージを印象的な形として残すことができるでしょう。
厳密な意味での「電報」とはNTT東西(と国際電報はKDDI)のものを指し、2003年(平成15年)の信書便法の施行によって民間企業の参入が解禁されるまではNTT独占のサービスでした。
一方の「電報類似サービス(特定信書便事業・3号役務)」ですが、平成29年度末時点では260社以上の事業者が参入しています。こちらはいわゆる"ネット電報"のイメージも強いようですが、NTT電報と同じように115番やフリーダイヤルによる電話申込が可能な事業者もあります。逆にNTT電報でもネット申込(D-MAIL)が利用できる状況ですので、申込方法という意味ではあまり違いを意識する必要はないかも知れませんね。
両者の大きな違い、それは認知度と料金面です。
ほんの15年前までNTT独占だった影響からか、電報といえばNTTに限るとのイメージはシニア層を中心に根強いようです。受け取った方はどの事業者の電報かをそれほど気にしないでしょうが、まだまだNTTのブランド力は健在のようですね。
かたや料金面については後発の電報類似サービスに強みがあります。先に触れたモールス信号時代の名残なのか、NTT電報は文字数に応じた課金方式というほとんど化石のような料金体系。これではまるでNTT固定電話の通話料金みたいですよね。
それに対して電報類似サービスの多くは1通あたりの定額制(十分な文字数と台紙のセット)です。現代においては「サクラサク」のような短文打電は少ないと思います。特にビジネスでは慶弔利用が中心でそれなりの文字数になるでしょうから、料金面は電報類似サービスに圧倒的なメリットがあります。
さて、みなさんの会社内での電報利用はどのような取決めでしょうか?
まず社内申請をあげて、電報申込は総務部門などの手配担当の方が行うルールが一般的かもしれません。ちなみに当社の場合、社外向けは交際費として総務部が、社内向けは福利厚生費として人事厚生部が手配窓口です。
一方、各拠点や部門の判断において現地担当が電報申込を行い、社内申請は別途でも可としているケースもあるようです。特に急な訃報に対する弔電などは、とにかく電報申込を優先せざるを得ないですからね。
ただし本来の手配担当の方以外に任せてしまうと、費用計上における勘定科目がのちのち問題になってくるかも知れません。
というのも、NTT電報に限らず通信系の電報事業者は、電報料金を電話料金の請求書に合算することが可能なため、電報利用の社内申請のタイミングによっては経理部門の方が電話料金に含まれている電報料金に気付けないことがあるからです。
あわせて電報と電話料金の利用月が月ズレしていることもネックになります。当社も頻繁にこのようなお問合せをいただきます。
「3月に電報を打電したはずだが3月利用の電話料金上に見当たらない!なぜ!?」
電報料金が電話料金に合算されるタイミング、これは電報会社と通信会社間で取決めされているため、残念ながら当社ではお答えができません。電報会社や通信会社へ直接お問合せいただく必要が出てきますので、解決までには意外に手間と時間がかかってしまうのです。
通信会社に対する支払いは全て通信費で済ませるようなイメージもありますが、実際には用途により科目は変化します。祝電・弔電が社外向けであれば「交際費」でしょうし、社内向けであれば「福利厚生費」とするのが一般的なようです。なかには電報料金も「通信費」に含めてしまうケースを耳にしますが、大雑把に何でも通信費として計上してしまうと、後から修正する際に非常に大きな労力がかかりますし、監査や税務署からの指摘にも繋がりかねません。
可能であれば電報利用における社内ルールの徹底をはかり、計上時には適切な勘定科目に振り分けておいた方が無難ではないでしょうか。
電話による申込はやめてネット申込に集約すべきでしょう。これはNTT電報でも電報類似サービスでも言えることです。
ネット申込に集約しておけば「いつ、誰が、誰宛に、いくらの料金の電報を打電したか」を電報各社のWEBサイト上で管理することができます。仮に急な訃報によって現地担当の方が直接申込まで行う場合でも、WEBサイトのログインIDを管理しておくことにより自社内の利用履歴は全て把握可能です。
これだけ徹底しておけば、社内申請との照合や適切な勘定科目への振分け作業も多少は容易になるでしょう。