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ここ数年の通信市場は大きく変化しています。かつて一家に一台あった固定電話は、若年世代では所有していない人も増えてきました。逆に携帯電話は生活の必需品となり、スマートフォンの出現により私達の生活も変化しています。
以前までは携帯電話は大手電話会社から購入することが常識でしたが、その認識も変わりつつあります。MVNOの誕生から17年が経ち、2015年には大手通信会社のSIMロック解除が義務化されました。2019年には中古のスマートフォンも解除が義務化される予定です。最近は海外メーカーを見る機会も多くなり、SIMが店頭に並んでいる光景も見慣れてきました。今後は消費者がより自由に端末とSIMを選択する時代がくるでしょう。
また2020年に向けて5Gの商業化が進んでいます。スマートフォンをはじめ、あらゆる分野での活用が想定されており、新しいサービスの出現など市場変化が起こると予測されています。
今回は最新の携帯電話市場を踏まえ、今後の通信市場についてお伝えします。
携帯電話の会社で皆さんが思い浮かべる会社はどこでしょうか。おそらくdocomo、au、softbankが多いかと思います。
それでは2018年3月時点での市場シェアを見てみましょう。
総務省:電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表 (平成29年度第4四半期(3月末))を基に作成
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban04_02000136.html
契約の総数は1億7,357万となっており、大手3社が市場の約90%を占めています。
また2019年には楽天が携帯キャリアとして参入を予定しており、今後市場シェアに変化があるでしょう。
MVNO※1のシェアですが、契約数は1,840万で全体に占める割合は約10%になります。現時点では大手3社が圧倒的ではあるものの、今後IoT※2市場の拡大に伴いMVNOのシャアも拡大すると予測されています。
※1. MVNO(Mobile Virtual Network Operator)の略。日本語では仮想移動体通信事業者。大手3社(docomo,au,softbank)以外の通信事業者。
※2.IoT(Internet of Things)の略。身の回りのモノがインターネットに接続される事。
ではMVNOにはどういった事業者があるのでしょうか。
MVNO事業者のシェアを見てみましょう。
総務省:電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表 (平成29年度第4四半期(3月末))を基に作成
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban04_02000136.html
MVNOの事業者数は2018年3月時点で886社にのぼり、毎年増え続けています。
しかし上記の通りわずか5社で市場の5割以上を占めています。
今後も上記5社のような一次MVNO※3と言われる事業者が、市場を牽引すると予測されます。その他に多く含まれる二次MVNO※3は、他社と差別化された商品投入が市場で生き残る為に必要になりそうです。
※3.一次MVNOは大手3社から直接回線を借りている事業者を指します。
二次MVNOは一次MVNOから回線を借りている事業者。
通信に関するノウハウがある企業は下記のように一次MVNO事業者であることが多い。
楽天は2019年に一次MVNOからMNOへ変わる予定です。
先程、MVNO市場は本格的なIoT時代に伴い拡大するとお伝えしました。IoTとはInternet of Thingsの略で、あらゆるモノがインターネットに接続する事を指します。今後インターネットに繋がることで、利便性が向上する製品が多く出てくると予測されています。身近なところで言えば、スマートウォッチなどの身に着けるモノや、家庭の電化製品、車、医療分野などです。こういった製品に内蔵されるのがeSIM(embedded Subscriber Identity Module)と呼ばれる埋め込み型のSIMです。
従来のSIMは情報を書き込む為の専用端末が必要で、一度情報を書き込むと上書きできませんでした。対してeSIMは情報の上書きがシステム上から可能です。つまり異なる通信事業者間でSIMを差し替えることなく情報の更新が出来ます。例えば個人の場合、携帯電話のキャリア変更の手間がなくなる、事業者では海外の輸出先にあわせた規格のSIMを用意する必要がなくなります。
IoT市場は2015年時点での5,200億円といわれていますが、2022年には3.2兆円※4まで拡大するとされており、MVNO市場も連動して拡大するとされています。
※4.出典NRI 「2023年度までのICT・メディア市場の規模とトレンドを展望」
現在私たちは携帯電話やタブレットなど、複数のデバイスを所有することが当たり前になってきました。本格的にIoT化が進めば、身の回りにより多くの通信機器が登場するでしょう。その起爆剤になるのが、5Gなどの次世代の技術の登場です。今までの通信規格(3Gや4G)では実用に至らなかったものが、実現可能になると予想されています。
ここまで5Gが期待されている理由として、「高速大容量」「低遅延」「多接続」が挙げられます。「高速大容量」は今までの100倍、「低遅延」は今までの10分の1、「多接続」は今までの100倍とされています。3Gや4Gで実現可能な範囲内でサービスを考えなければいけなかったものが、5Gでは実現したいコト先行でサービスを考えるこが可能になります。おそらく私達が考え得る「こんなこと出来たら便利だな」というもの多くが実現可能になるでしょう。
スマートフォンの普及前後で、利用するデータの使用量は大きく変化してきました。特に個人における毎月のデータ使用量は増加傾向にあり、50GBプランやSNS利用ではデータを消費しないプランなどが出現してきました。では法人におけるデータの使用量はどれぐらいなのでしょうか。
今回は弊社サービスを利用している顧客情報を基に、大手3社の使用量を調べてみました。
インボイス調べ 2018年7月利用分参照
1回線あたりの平均使用量は上記のとおりです。大手3社の平均は3GB以下に収まっていました。意外と少ないようです。
続けて、5GB以上利用している回線がどのくらいあるのかを調べてみました。
インボイス調べ 2018年7月利用分参照
5GB以上利用している回線の割合は、全体の8%しかありませんでした。
個人携帯のように、社用の携帯では動画やweb閲覧をする機会があまりないためだと思われます。近年は使用量の増加に伴い法人でも定額のプランが一般的ですが、利用用途によっては無駄に料金を支払っているかもしれません。ただしパケットを分け合えるシェアプランなどを利用していることもあるので、一概に無駄と言い切ることはできません。本当に必要なプランに加入しているか、自社の利用状況を確認してみるのもいいでしょう。
「モバイルルーター×SIM」 急場を凌ぐ活用
10年前までは現実的ではありませんでしたが、通信技術の進化により可能になった事例をご紹介します。
皆さんはインターネットの環境を整えるとき、どのような手続きをしていますか?
通常であれば電話会社にフレッツ光やプロバイダの申込みをしますよね。その際工事日の日程や当日の立会いなどの調整が必要になります。また工事のお金も掛かっていました。しかし近年は通信速度やモバイルルーターなどの機器の機能向上もあり、今までとは異なる形でネット環境を整えることが可能になりました。
法人の場合、仮設の事務所や店舗の開店など急ぎでネット環境を用意することがあります。個人とは異なり会社の事業計画などで納期がタイトな場合もあり、顧客が予定している日に工事に入れないなんて事は結構あります。そんな時役に立つのが「モバイルルーター×SIM」です。工事の必要はなくプロバイダへの申し込みも不要で、機器とSIMさえあれば簡易のネット環境を作ることができます。
回線の速度や安定性は現時点では光ファイバーには適いませんが、一時的に利用することは十分可能です。同様のケースで使い回したり、出張者用のルータとして利用することも出来ます。設定に特別な知識が必要ないため、スマートフォンに慣れ親しんだ若年層はもちろん、中年以上の世代でも容易に使うことが可能です。
2020年には次世代の通信規格「5G」の運用が開始される予定です。「5G」の通信速度は4GLTEの約100倍とも言われているため、もしかするとインターネットの環境は有線から無線メインになるかもしれません。
「ノートPC×SIM」 社員の生産性を向上
※Lenovo社の活用事例に弊社が掲載されました。詳しくはコチラよりLenovo社の事例紹介をご参照ください。
職業や職種にもよりますが、多くの方が仕事をする際にPCを利用しています。最近は都心を中心にシェアオフィスやワークスペースなども増えてきており、自社オフィスの外で仕事をする人も増えてきています。
今までは外出先で仕事をしている人の多くは、滞在する場所のWi-Fiや携帯電話のテザリングを利用するのが一般的でした。もちろんこの利用方法でも問題ないですが、頻繁にPCを利用する人にとっては、都度Wi-Fiにつないだりテザリングするのは意外と手間だったりします。
ここで「ノートPC×SIM」を活用します。
最近のノートPCはSIMスロットが搭載されているものも多いため、起動してすぐにネット環境に繋ぐことが出来ます。出先のWi-Fiと異なり、セキュリティー面でも安心して利用することが出来ます。
また外出先でストレスなくデバイスを使えることは生産性の向上にも繋がります。弊社の事例になりますが、導入前は営業職にタブレットを貸与していました。しかし社内と同等の仕事が出来ず、結局会社にもどる必要があり業務負担の解消には繋がっていませんでした。
導入後は基幹システムとの連携により、仮想デスクトップインフラ(VDI)で外出先でも社内と同じ作業が可能になりました。わざわざ会社に戻る必要もなく、メールの閲覧や返信、資料の作成、社内システムへのアクセスなども可能になりました。
前述したeSIMの普及が本格的に進めば、ノートパソコンに内蔵されるようになり国内はもちろんですが海外に渡航するときも現地のSIMを購入したり、電話会社に対し申請をする必要はなくなるでしょう。